Deepak Kumar Vitaya Kumar et al.
Science Translational Medicine (2016) 25 May
Vol. 8, Issue 340, pp. 340ra72, DOI: 10.1126/scitranslmed.aaf1059
http://stm.sciencemag.org/content/8/340/340ra72.abstract
普段あまり見ない雑誌ですが、Science のウェブサイトで Editor’s Picks として紹介されていた論文。ええっ!えええっ!と、思う論文です。アミロイドベータペプチド(Aβ)は、アミロイド前駆体蛋白質から生じる42(もしくは40)アミノ酸残基のペプチドで、これが凝集しアミロイドを形成して脳に蓄積すると神経細胞が変性してアルツハイマー型痴呆を引き起こすと言われています。ところが、このペプチド、進化的に非常に良く保存されています。例えば、ヒトのAβ42のアミノ酸配列は、何と4億年前に分岐した筈のシーラカンス(!)と全く同じです。では、このペプチド、アルツハイマーを引き起こす負の側面しか持たないのでしょうか?そんなものが、進化的に捨てられずに保存されているなんて。。。考えてみれば不思議ですね。この論文では、マウスや線虫のモデル系を使った実験で、Aβペプチドが、ある種の感染を防ぐantimicrobial 活性を持つのでは、と提唱しています。可溶性のAβペプチドが、病原菌の細胞壁に結合することで、ホストの細胞に取り付くのを防ぎ、さらに、病原菌上でアミロイド繊維を形成することで、病原菌を捕捉してしまうというわけです。なるほど、だとすると、”わるもん”ではなく、”いいもん”なのかも。。。Editorの紹介記事のタイトルも、”Rehabilitation of a β-amyloid bad boy”。頷けますね。(M)