Nature 542, News & Views
Ewald H. Hettema & Stephen J. Gould
251–254 (09 February 2017) doi:10.1038/nature21496
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature21496.html
今回の話題は、何といってもこれでしょう。真核細胞のオルガネラのひとつ、ペルオキシソームは、もともと細胞が持っているペルオキシソームが、成長と分裂を繰り返す事で維持されています。ですが、最近、ペルオキシソームが de novo に、つまり新たに、作られうるのでは、と主張する研究者もいます。表題にある「from scratch」というのは、英語で「ゼロから」という意味(なぜ英語では、「scratchから」と言うのかは不思議ですが、それはさておき)。それらの主張では、酵母でも、哺乳類でも、ペルオキシソームが ER 小胞体から生じるという説です。今回、さらに一歩進んで、ペルオキシソムの de novo 合成は、ミトコンドリアから生じた膜ベシクルと、ER 小胞体から生じた膜ベシクルが融合する事から始まる、という興味深い論文を紹介しています。
そして元論文は、同じ号に掲載されたこれです。
Newly born peroxisomes are a hybrid of mitochondrial and ER-derived pre-peroxisomes
Nature 542, 251–254 (09 February 2017)
Alum Sugiura, Sevan Mattie, Julien Prudent & Heidi M. McBride
doi:10.1038/nature21375
http://www.nature.com/nature/journal/v542/n7640/full/nature21375.html
この論文では、ミトコンドリア外膜に(ミス)ターゲットされて局在してしまったペルオキシソームのPEX蛋白質輸送装置のimportレセプターである Pex3とPex4、それと、ER 小胞体から生じる膜ベシクルに乗ってくるPEXの必須コンポーネント Pex16 が、二つの膜ベシクルの融合により、機能しうる PEX 蛋白質輸送装置を構成して、それにより、どんどんペルオキシソーム蛋白質が運ばれるようになって。。。面白いですね。ただ、
最初の紹介文、この発見を大変面白い!と紹介しつつも、やはり、多くの疑問が残されていると書いていますね。ひとつは、そのような de novo ペルオキシソーム合成には、何日もかかっているように見える点。今回は、ペルオキシソーム形成不全の変異体を用いているので、そのような非常に遅いものが見えるのですが、実際に、ペルオキシソームがある状況では、そのようなde novo による合成は、ほとんどペルオキシソームの形成に寄与していないのではないか。。。 という主張ですね。もうひとつは、酵母では、そのような現象は見られていないのでは、という主張です。
いずれにせよ、これからの成り行きが楽しみですね。
(M)
(Nature News & Views: Cell biology: Organelle formation from scratch. By Ewald H. Hettema & Stephen J. Gould より)