Cotranslational signal-independent SRP preloading during membrane targeting

Justin W. Chartron, Katherine C. L. Hunt & Judith Frydman

Nature Published online: 03 August 2016:
doi:10.1038/nature19309
LETTER

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature19309.html

“We show that the SRP (signal recognition particle) preferentially binds secretory RNCs (ribosome-nascent-chain complexes) BEFORE their targeting signals are translated.

そうなんですか! 真核細胞で小胞体ER膜を経由して運ばれていく蛋白質の多くは、アミノ末端に疎水性のストレッチからなるシグナル配列を付加されて、サイトゾルのリボソームで合成されます。シグナル配列は、シグナル認識粒子(SRP)という蛋白質-RNA複合体に認識されて、ER膜上のSRPリセプターに結合して、輸送装置であるSECトランスロコンへと運ばれていきます、というのは、ノーベル賞をもらったGunter Blobel のシグナル仮説から延々と続く確立されたストーリー。でも、サイトゾルに非常に多量に存在するリボソームに対して、SRPの数は限られている状況で、リボソームから出てくる雑多な新生鎖に対して、いかにSRPが、他の分子シャペロンとの競合に勝ってシグナル配列を認識しうるのか、不思議といえば不思議な話。in vivo では何らかの仕組みがある筈!という作業仮説のもと、筆者らが、リボソームプロファイリングと生化学的手法を組み合わせて解析した結果、導き出したのは、SRPは、シグナル配列が合成される以前から、シグナル配列を持つ蛋白質のmRNA が有する何らかの情報によって、そのmRNAを翻訳するリボソームにリクルートされている! という驚きの結論。論文は ”These findings illustrate the multi-layered nature of protein biogenesis fidelity.” で結ばれています。なるほど、細胞の中というのは、いろんな効率を高めるために、まだまだ隠された仕組みを持っているということの良い例ですね。大腸菌でリコンビナントを発現させて構造解析、なんて実験だけでは、このような細胞内の重要な事象の発見は、無理ですね。細胞内で実際に何が起きているのか、そこを明らかにしていくのが、私たちのグループの研究スタンスでもあります。(M)

Light-dependent chlorophyll f synthase is a highly divergent paralog of PsbA of photosystem II

Science 07 Jul 2016:
DOI: 10.1126/science.aaf9178

Research Article

Ming-Yang Ho, Gaozhong Shen, Daniel P. Canniffe, Chi Zhao, Donald A. Bryant

http://science.sciencemag.org/content/early/2016/07/06/science.aaf9178.abstract

なんとぉっ!! PsbA とは光化学系II の中心にある D1 蛋白質。相同な PsbD(D2蛋白質)とヘテロダイマーを作って光化学系IIの反応中心を構成しています。クロロフィルa(P680)を結合し、プラストキノン結合部位も持ち、チロシン残基(TyrZ)は、さらにC末端側に構築される酸素発生反応の触媒中心であるマンガンクラスターへの電子伝達に関与しています。far-red 近赤外光(700-800nm)を利用できるシアノバクテリアには、chlorophyll f という特別なクロロフィルを持つものがあるそうですが、このシアのバクテリアが クロロフィル f を合成するには PsbA の遠いパラログにあたる蛋白質が必要で、この蛋白質が、マンガンクラスターは持ちませんが、光化学系II のような構造を作る事で、クロロフィルa を基質として、光還元反応によりクロロフィルfを合成できるようになっている、という事らしいです。まだ、アブストだけしか見れませんが、これもまた、進化の過程で生物が見せる柔軟性の一つの現われだと思いますね。論文データが楽しみですね! (M)

Gordon Research Conference: Mitochondria & Chloroplasts

2016 Mitochondria & Chloroplast Gordon Research Conference

Evolution, Biogenesis and Quality Control of Organelles of Endosymbiotic Origin’

at Mount Snow in Vermont (North-East of the US) during the week of Sunday June 19 – Friday June 24, 2016

http://www.grc.org/programs.aspx?id=11289

 もう1週間以上経ってしまいましたが。。。行ってきましたよ。ゴードン会議。内容は、、、ひ、み、つ、、、なので、一切話せませんが、面白かったですよ。本当に、この分野の大御所ばかりの前で講演するのは冷や汗ものでしたが、また、我々のデータを印象付けるいい機会だったと思います。ゴードン会議とはいえ、宿舎は、大学の寮ではなくてリゾートホテル。雪があれば尚いいところでしたが、好天に恵まれ、非常に快適にすごせました。この分野の最先端の話を沢山聴けて、ホテルに缶詰の、まさに勉強漬けの1週間でした。二年後は、イタリア Il Ciocco!!

http://www.marriott.co.jp/hotels/travel/lcvbr-renaissance-tuscany-il-ciocco-resort-and-spa/?pid=corptbta&scid=b661a3c4-9c47-48c8-9e13-75b66089dd79

ここは以前行った事がありますが、また必ず行こう!って思いましたね。 (M)

学会会場となったホテル(Mount Snow)

Amyloid-β peptide protects against microbial infection in mouse and worm models of Alzheimer’s disease

Deepak Kumar Vitaya Kumar et al.

Science Translational Medicine (2016) 25 May
Vol. 8, Issue 340, pp. 340ra72, DOI: 10.1126/scitranslmed.aaf1059

http://stm.sciencemag.org/content/8/340/340ra72.abstract

 普段あまり見ない雑誌ですが、Science のウェブサイトで Editor’s Picks として紹介されていた論文。ええっ!えええっ!と、思う論文です。アミロイドベータペプチド(Aβ)は、アミロイド前駆体蛋白質から生じる42(もしくは40)アミノ酸残基のペプチドで、これが凝集しアミロイドを形成して脳に蓄積すると神経細胞が変性してアルツハイマー型痴呆を引き起こすと言われています。ところが、このペプチド、進化的に非常に良く保存されています。例えば、ヒトのAβ42のアミノ酸配列は、何と4億年前に分岐した筈のシーラカンス(!)と全く同じです。では、このペプチド、アルツハイマーを引き起こす負の側面しか持たないのでしょうか?そんなものが、進化的に捨てられずに保存されているなんて。。。考えてみれば不思議ですね。この論文では、マウスや線虫のモデル系を使った実験で、Aβペプチドが、ある種の感染を防ぐantimicrobial 活性を持つのでは、と提唱しています。可溶性のAβペプチドが、病原菌の細胞壁に結合することで、ホストの細胞に取り付くのを防ぎ、さらに、病原菌上でアミロイド繊維を形成することで、病原菌を捕捉してしまうというわけです。なるほど、だとすると、”わるもん”ではなく、”いいもん”なのかも。。。Editorの紹介記事のタイトルも、”Rehabilitation of a β-amyloid bad boy”。頷けますね。(M)

Translation readthrough mitigation

Joshua A. Arribere, Elif S. Cenik, Nimit Jain, Gaelen T. Hess, Cameron H. Lee, Michael C. Bassik & Andrew Z. Fire

Nature (2016) doi:10.1038/nature18308. Published online 01 June 2016

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature18308.html

 “mitigation”とは緩和、軽減のこと。mRNA からタンパク質の翻訳はリボソーム上で行われ、通常ストップコドンのところで翻訳は終結します。しかし、稀に Translation readthrough という現象が起きて、つまり、ストップコドンを、パーフェクトマッチではないアミノアシルtRNAが認識して、読み枠はそのまま、3’UTRまで翻訳を続けてしまう事があります。このような場合、次のストップコドンが出てくるまで翻訳は続くわけですが、本来のタンパク質のC末端に余分な配列がついているわけですから、機能できないだけでなく、細胞にとって害になる場合もあります。著者らは、readthrough で読まれるストップコドン下流のフレームには、それが付加された場合に、タンパク質を不安定化させるような(例えば分解系に回されやすいような)配列がコードされているのではないかとの作業仮設を立てて、検証実験をしています。面白い事、考え付くなぁ〜。このアイデアが出てきたところが、この研究のキーポイントですね。一旦、アイデアが出ると、例えば、本来のストップコドンに変異を入れてみたり、下流の配列を別のタンパク質に付加したり等々、いろいろ実験のアイデアが出てきます。下流の塩基配列をランダムにシャッフリングして偶然生じる読み枠の付加配列と比較して、線虫やヒトの3’UTRの読み枠にコードされる配列には、有為な傾向があるとの事。本当なら、すごいですね。(M)

Lignin biosynthesis: Tyrosine shortcut in grasses

Hiroshi A. Maeda

Nature Plants (2016) Published online 03 June 2016
News & Views

http://www.nature.com/articles/nplants201680

 高分子のフェノール化合物であるリグニンは植物細胞壁の主要成分であり、維管束植物にとってリグニン生合成経路を進化により獲得した事が、植物体の維持や、維管束を通して、水を長い距離運ぶのに重要だったと考えられています。ほとんどの植物でリグニンの生合成は、L-フェニルアラニンから始まり複雑なステップを経て行われますが、イネ科ではL-チロシンを出発材料として、短絡された生合成経路が働いているとの最近の研究成果を紹介しています。
 面白いのは、L-フェニルアラニンから始まる経路の最初のステップの酵素 phenylalanine ammonia-lyase PAL は、イネ科が獲得したチロシンを基質とする最初の酵素 tyrosine ammnonia-lyase TAL に、人為的には、1アミノ酸置換で、変換可能だという事です。つまり、イネ科以外の植物が、エネルギー収支で言えば、より効率の良いTAL経路を容易に獲得できたはず、であるにも関わらず、そうならずに、複雑な PAL 経路を維持してきた、という事実です。そこには、おそらく必ず何か理由があるはずですね。PAL 経路の中間代謝物が何か他の代謝に使われている、という可能性も考えられる、と書いてありました。私たちの葉緑体への蛋白質輸送の研究でも、イネ科特有の現象を見つけていますので、なるほど、こういう場合もあるのかと、興味深かったですね。(M)

Gordon Research Conference: Mitochondria & Chloroplasts

Evolution, Biogenesis and Quality Control of Organelles of Endosymbiotic Origin

http://www.grc.org/programs.aspx?id=11289

今月19日からアメリカで開催される “ゴードン会議:ミトコンドリアと葉緑体” のプログラムがアップされています。今回はチェアを務めるKlass J. Van Wijk 博士の招きで講演をするのですが、受け持ちのセッション Sorting of Organellar Proteins の副タイトルが Session in honor of Dr. Gottfried Schatz.となっています。

Schatz 博士といえば、ミトコンドリアのバイオジェネシス・蛋白質輸送の分野を文字通り一から開拓した研究者。昨秋ご逝去されました。私も含め、細胞内蛋白質輸送の研究をしていた者にとって、Schatz 研から次々と発表される論文は、まさに研究のテキストブック。Materials and Methods に至るまで、隅々まで読んだ記憶があります。そんなSchatz 博士の名を冠したセッション。大変光栄に思います。下手な講演はできませんね。(M)